新司偵、正式には100式司令部偵察機は「新しい」司令部偵察機という意味。ということは旧司偵もあるわけで、それが97式司令部偵察機。この本では、キ15から神風号、97式司令部偵察機、そして100式司令部偵察機の系譜を軸として物語が語られる。
それまで世界になかった戦略偵察という新しいコンセプトで開発されたキ15という飛行機は、その新しさ故に軍に認められず、干されていた。戦闘機よりも速く、そして遠くまで飛べたにもかかわらず。それが、朝日新聞社の神風号として日本ロンドン間飛行の記録を作り、日本どころか世界中から注目されてしまう。折しも、日本と中国の戦争が悪化。そこで、97式司令部偵察機として大活躍する。そのコンセプトがようやく認められたのだ。
そして、そのコンセプトを引き継いで生まれたのが100式司令部偵察機。単発だったのが双発になり、より洗練されて、当時の世界標準を軽く突破。早く、高く、遠くまで飛べるスーパー飛行機になった。美しい飛行機は優れた飛行機というレジェンドがここでも確認できる。
最終的には、武器をつけて戦闘機に変身。何しろB29の飛行高度1万メートルまで登れる飛行機は新司偵しかなかったのだ。戦闘機と偵察機ではその頑丈さが違うので、通常ではそのようなことは無理なのだ。言ってみれば偵察機は陸上のアスリートみたいなもの、アスリートが背中に重機関銃を背負って走る姿を想像してみればいい。しかし、新司偵は構造がよかったのでそのような使用にも十分に耐えたという。
モスキートやP-38のように、始めから戦闘機として開発され、その優秀さから偵察機に転用した例はあるけれど、その逆は新司偵だけだったと碇さんはこの本の中で述べている。新司偵のスタイルはのびやかですなおで無理がない。本当に美しくエレガントなスタイルだ。ただ、残念なのはやはりエンジンまわりはオイルで汚れてしまっていたという日本の当時の工作技術の弱さである。敗戦後、日本に進駐してきたアメリカのアヴェンジャーのエンジン・ナセルの後部をあけるとほこりがうっすらたまっていたことに感心するエピソードが出てくる。
このような基礎的なパッキングの技術の差は、実は致命的な差につながっていた。1000機以上作られたのは特筆すべきである。
ところで、三船敏郎って航空写真を扱う司偵の偵察員だったのだ。軍隊では喧嘩ばかりしていて上等兵どまり。戦後にカメラマンとして採用してもらうため東宝に履歴書を提出し、まちがって俳優に採用されてしまったのだそうだ。(この本には載っていないエピソードでした)
ところで、三船敏郎って航空写真を扱う司偵の偵察員だったのだ。軍隊では喧嘩ばかりしていて上等兵どまり。戦後にカメラマンとして採用してもらうため東宝に履歴書を提出し、まちがって俳優に採用されてしまったのだそうだ。(この本には載っていないエピソードでした)
1 百式司令部偵察機
2 「スピットファイア」
3 「鐘馗」
4 「吞龍」
5 サルムソン2A2(乙式一型)
6 三菱「鳶」
7 石川島T2
8 川崎KDA2(八八式偵察機)
9 八八式軽爆撃機
10 九七式司令部偵察機(神風号)
11 「屠龍」
12 「飛燕」
13 「キ102」
14 海軍七試艦上戦闘機
15 九六式艦上戦闘機
16 零式艦上戦闘機
17 九四式偵察機
18 九二式偵察機
19 九一式戦闘機
20 キ10(九五式戦闘機)
21 キ11
22 ドヴァーチンD510
23 ユンカースJu160
24 エアスピード・エンボイ
25 キ15
26 キ27(九七式戦闘機)
27 サルムソン(乙式一型)
28 メッサーシュミットBf109
29 ホーカー・ハリケーン
30 セヴァスキーP35
31 カーチスP36
32 ヘンシェル126A1
33 スーパーマリン・スピットファイア
34 I16
35 アンリオ220
36 ロアール・ニュポール20
37 ロマノ110
38 ブレゲー690
39 ポテ630
40 ノースロップA17
41 デ・ハビランド・コメット
42 九六式陸上攻撃機
43 ニッポン号
44 中島AT2型
45 フィアットBR20爆撃機
46 九七式重爆撃機
47 I15
48 ウエストランド・ライサンダー
49 九九式高等練習機
50 九七式軽爆撃機
51 キ51
52 九九式襲撃機
53 九九式軍偵察機
54 キ83
55 モラン・ソルニエ
56 ノースアメリカンB25
57 P40
58 キ60
59 キ70
60 ロッキードP38
61 B17
62 B24
63 グラマンF6Fヘルキャット
64 リパブリックP47サンダーボルト
65 ノースアメリカンP51ムスタング
66 ロッキードF4
67 キ83
68 キ95
69 B29
70 中島J1N1(月光)
71 九八式陸上偵察機
72 「彗星」
73 中島J1N1-C(二式陸上偵察機)
74 「彩雲」
75 「桜花」
76 「疾風」
77 一式双発高等練習機
78 A26「航研機」
79 キ77
80 グラマンTBFアヴェンジャー
1991年11月
碇義朗
光人社NF文庫
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