六機の護衛戦闘機



 8月15日、暑い夏にこの本を読んだのは私のちょっとしたこだわりでもある。
 著者、高城肇さんは雑誌「丸」の編集者で、光人社の社長さん(今、調べたら会長さんだった)。高城さんが神田駿河台でこの本を書かれた頃に、私も神田駿河台で学生やっていた。この本は、30年くらい前の暑い夏休み、大学近くの駿河台下の書店で購入したのだ。駿河台下の角にあった洋食屋さんに海軍関係の写真などが飾ってあったっけ。

 紙焼けした扉裏に「-君達の長い通夜はまだ終わらない」と書いてある。
 戦後・・・何年たったのだろう(・・・62年だ)。
 なぜ、通夜が終わらせてもらえないのか。
 それはこの本に登場する6人の負ったDUTYであるのだ。
 この本が書かれたのは戦後25年目。
 そろそろ、通夜も終わりにしてあげたいね。

 この6人とは、山本五十六元帥の乗った一式陸上攻撃機の護衛をしていたパイロットたちなのだ。当時は神様のような存在であった山本元帥を護衛していて、ついに守りきれなかったその重い負い目を負わなければならなかったのである。6人のパイロットたちは、死に場所を与えられるかのように激戦の地へ連日攻撃に出ることになる。

第一分隊分隊長 森崎武中尉、二番機 辻野上豊光一飛曹、三番機 杉田庄一飛兵長
第二分隊分隊長 日高義巳上飛曹、二番機 岡崎靖二飛曹、三番機 柳谷謙治飛兵長(終戦まで生き抜く)

 その中でも杉田庄一は、死中に生を得るような戦いの場に身を置き続け、未確認ながら撃墜100機以上(日本最多)と言われている。終戦間近には、源田実大佐が四国松山で組織した有名な343空に呼ばれ、スクランブル発進の最中にグラマンF6Fに撃ち落とされる。映画「零戦燃ゆ」の濱田庄一パイロットのモデルとなった人物である。昭和15年舞鶴海兵団に入団、その後予科練・戦闘機専攻学生と進んで飛行機乗りになった。新潟県上越地方の浦川原村出身で、同じく上越出身の私は杉田に親近感をもった。私の父も(今はよぼよぼしてはいるが)、昭和17年に同じく直江津から舞鶴海兵団に志願兵として17歳で入団していることもあり、父の青春とも重なるのだ。(父は搭乗員ではなく、整備員になったが。)


 もう一話の「非情の空」は、ラバウルでの海軍航空隊の話。坂井三郎の「大空のサムライ」が有名だが、これは異聞零戦記というところか。



六機の護衛戦闘機
1 九六艦上戦闘機
2 零式艦上戦闘機
3 一式陸上攻撃機
4 ロッキードP38
5 カーチスP40
6 ベルP39
7 ヴォート・シコルスキーF4Uコルセア
8 ボーイングB17
9 グラマンF4F
10 紫電改
11 グラマンF6F


非情の空
1 零式戦闘機
2 カーチスP40ウォーホーク
3 マーチンB26マローダ
4 ボーイングB17フォートレス
5 ベルP39エアラコブラ
6 ロッキードA29ハドソン
7 ノースアメリカンB25ミッチェル
8 スピットファイア
9 グラマンF4Fワイルドキャット
10 SBDドーントレス



光人社
昭和48年5月10日初版
高城 肇 著


光人社文庫と中公文庫でも出版されている。
中公文庫版では「六機の護衛戦闘機」と「非情の空」が別冊となっている。

(光人社文庫版表紙)


(中公文庫版「非情の空」)

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