ヒコーキの心


この本を何度読んだことだろうか。
ある時期、寝床の横に佐貫亦男のこのシリーズがいつもおいていました。
短い文章の中に小気味よい佐貫エッセンスの入った文章は、どのページから読み出しても面白い。
おおば比呂司のさし絵もいい。
デフォルメされた絵の一本の線のカーブがその飛行機の特徴を見事にとらえています。
線のやわらかさも、いとおしい。
一種の浮世絵の世界です。
FW200のコンドルの絵の線が最高。
飛行機本にとりつかれた原点になったのがこの本です。


「千回の滑空」
ライト兄弟の話。やはり、ここからでした。
「ややこしい機名」
ドペルデュサン飛行機会社(SPAD)の話。高校時代にインディアンマークのSpadのポスターを宝物にしていたなあ。プラモももってる。
「棺桶とろうそく」
第1次世界大戦のフランス空軍エースNo3のシャルル・ナンジェセールの話です。
「御家人剣法」
フランス人好み、着流しに片手剣の御家人剣客ニューポール一葉半の話です。
「赤い翼」
リヒトホーヘンの乗ったフォーカー三葉半をめぐる話。

「赤い被害」

リヒトホーヘンに撃墜された飛行機の話。この話に続くのがすごい。
「消えた伴星」
溶接工上がりのホルト・プラッツの設計したフォッカーD型の話です。

「空飛ぶカミソリ」

ピアノ工場でつくられた機体ですか。ヤマハだってエンジン作ってるしな。

「二流の誇り」

二流飛行機会社のファルツのセンス。かなりオタクな話になってきたぞ。
「空飛ぶコマ」
二重回転式の画期的なエンジンを積んだジーメンス・シュッカートの話。
「由緒ある爆撃機」
第一次世界大戦でロンドン空襲を行ったゴータ爆撃機の話。宮崎駿が好みそうな機体。
「危険なラクダ」
英国人の哲学を具現したソッピース。

「ティペラリーの翼」

きちょうめんな整いすぎロンドン仕立てのモーニングのようなS・E・5。
「けんかカマキリ」
売られたけんかは必ず買った複座戦闘機。
「熱血詩人の強行飛行」
野暮と粋のきわどフォルム、クセのあるイタリア機。
「猿六村」
日本陸軍の制式にもなったサルムソン。

「どこにでもいるジェニイ」

8000機も作られた練習機

「緑のプレゲー」

ジュラミンを初めて使った軍用機。
「真紅のドラム缶」
大冒険時代の長距離飛行機の物語。いつかパリの航空博物館に行って実物を見てみたい。
「ジンクス号の最期」
ドゥーリットルで有名なジービーの話。事故が多くジンクスをかかえていた。
「フライ・バイ・ワイヤ」
高校生の時に一度プラモデルを作ったことがあるP-26、黄色の塗装がかっこよかった。

「トンボ家族」

第二次世界大戦後にイギリスの飛行場でドラゴン・ラピードを見たという佐貫先生の方に、興味深いものがあります。

「七つの窓」

古き良き時代の冒険小説には、このDC3「ダコタ」がよく出てきますな。戦前、戦中、戦後を働き通す飛行機のベテラン。
「五月の翼」
プロペラ設計者の佐貫先生は、やはりこの航研機のプロペラにこだわり。
「アブの歯ぎしり」
イ16のプラモデルを中学生の時に作ったぞ。へんてこな格好だけどえらく頑丈そうだなと当時思っていました。

「七面鳥の虐殺」

何よりもすごいのは、佐貫先生が1942年にベルリンで過ごしていて、同時代人としてこの飛行機に乗っており、空港でフォッケウルフ・コンドル輸送機を眺めていたという事実。
「貴族の装い」
なるほど、Ju87の美しさはプロシア軍人の服装にある整った快さか、そう言われるとそのように見えてくるから不思議です。
「腰抜けハゲタカ」
この飛行機のプラモデルも高校生の時に作った。飛行機オタクでも何でもない近所の子が作っていたので、中学生の時から欲しいなと思っていた。初めて作った4発機。今から数十年前の話です。
「死の床」
スタイルだけは確かに魅力的ですが、ゴンドラ銃座に乗る銃手の気持ちまで思いをはせることは無かった。それが「死の床」なのか。

「軽戦の思想」

F1マシンが争うレース場に紛れ込んだユーノス・ロードスターという感じでしょうか。

「タラントの勝利」

これは有名。複葉で200km/hくらいしか出せないソードフィッシュが、戦前から10年間も使われ、しかも大きな戦果もあげたというエピソード。
「提督の帽子」
地味な飛行機の逸話にもちゃんと物語。
「美しい中攻」
そうか・・・同時代の日本の飛行機にしては、美形だとおもっていたが。佐貫先生は「ユンカースの匂いがする」と評しています。なるほど。
「艦攻発進」
戦時中、父親が九七艦上攻撃機の魚雷整備をしていたのでこの飛行機の「魚雷」の話はよく聞きました。
「女性向きの飛行機」
佐貫先生が設計をしたプロペラが使われていた練習機の話。
「偉大なる妥協」
妥協ね・・・

「地獄から来た蚊」

同時代にドイツにいた佐貫先生、そうかモスキートによる空襲までちゃんと体験済みでしたか。おそれいりやした。

「ひるまぬドーントレス」

ダグラス社がノースロップ社の計画を引き継いでSBDが完成したんだと。ノースロップはノースラッグという表現が当時流行したんだと。佐貫せんせは、自分の言葉でそのことを語れる。
「ネコの系図」
ヘルキャットのスタイルはあまり良くない、しかし、性能が良ければ形などどうでもいいと佐貫先生はおっしゃるが、ヘルキャットはなにかアメフトのバックスって感じがしてそれなりに格好いいと思うのだけれど。当然、ムスタングはQBね。
「雷電物語」
落第坊主がアメリカ最多生産数の戦闘機になったという系譜がおもしろい。サンダーボルトもアメリカのミステリー小説に出てくる酒場の用心棒みたいでそれなりにクールだ。
「暗殺者」
山本五十六元帥が撃墜されたニュースをスイスで聞くか・・・当時。
「寒い銃座」
西部開拓時代の幌馬車隊なのね、B17って。そういわれればそう見えてくるから不思議。

「慈悲のカタリナ」

この飛行機もプラモデルで作った覚えがある。サイドの窓に特徴がありましたね、確かに。
「蒼ざめたタカ」
古い白黒のイタリア映画を見ているような錯覚を起こす文章。同時代をヨーロッパで過ごした佐貫先生にしか書けない秀逸。

「汚らしい戦闘機」

泥とコケの色の汚れた塗装に、スピナと方向舵を血の色の赤に染め、これでもかとばかりにへたくそな数字をウンコ色の黄色で胴体に描き、まだ足りないかと赤い星の隈どりをしている、しかもやった当人が得意であるから、つける薬がないと評されたヤコフレフ戦闘機。佐貫節、絶好調の文でした。

「スターリングラードの救世主」

やはり佐貫先生は、ちゃんちゃんとソ連の飛行機とのエピソードをもってました。

「シュトルモビク」

一度プラモデルで作りたい機体ですね。空飛ぶ戦車。
「ツバメの変身」
Bf109とはまったく違うと佐貫先生はおっしゃる。しっかりとしたDB601を飛燕に載せたかった。Bf109と似ている飛燕のエンジンを
換えたらFw190と似ていることになったのは不思議。
「ビルマの通り魔」
この飛行機のスタイルには小学生の時に少年雑誌のグラビアで見てから気に入っている。
「坂井三郎空戦記」
我が家にこの空戦機の本があるが、ボロボロである。父親が長い間かけて読んでボロボロにした。ちなみに父は少年整備兵として海軍航空隊にいた。
「大艇二代」
船の科学館ではいつもこの大艇にすりよっていく。後ろから見るとほんとに細い。横から見るとほんとに太い。不思議だ。

「葉巻の夢」

父親はこの一式に何度も乗ったという。よく落とされなかったもんだ。
「天翔ける龍」
一式陸上攻撃機と飛竜が似ているとは思わなかったです。

「モズの孤独」

扱いやすさと頑丈さが外見からも分かる・・・フォッケウルフです。
「コウノトリの冒険」
コウノトリの羽ばたく映像を見るたびに「シュトルヒ」が思い浮かぶのはこの文を読んでから。

「野馬の遠乗り」

ムスタングはアメリカンフットボールの名クォーターバックですな。スーパーヒーローです。
「ゼロ戦殺し」
「コルセア」も「ヘルキャット」と同じようにアメリカンフットボールの選手を思わせる。肩を怒らせた感じが特にそう思えるのです。
「凶悪の記録」
B-29はなにか醜悪な感じが強くついてまわる。B-17とは異質だ。無機質な冷たさが伝わる。佐貫せんせのボルトの頭の話もうなずけます。
「むなしい疾風」
やはり佐貫先生はプロペラから「疾風」の話を切り込みました。

「熱い彗星」

高校生の頃、時折買う飛行機の雑誌に写真があってこいつをよく見ていました。
「薄暮のスズメ」
別の雑誌でこのフォルクス・イェーガーの記事を読んだ。よくできているんだな、これが。かんたんに整備が出来るんだって。

「雲上の要塞」

初期のよたよた飛ぶ飛行機の頃から実際に見てきた佐貫先生は、この飛行機をどのように見て何をおもっていたのか。文章からは皮相的な感情しか感じられないのですが。

「ジェットの夜明け」

あんまりジェット旅客機には興味がありません。
「快走カラベル」
あんましジェット輸送機には興味がありません
「星の戦闘機」
あんましジェット戦闘機には興味がありません
「安全ジャンボ」
ジャンボには乗りますけど、怖いです。
「三つ星」
あまりジェット旅客機には興味がないのです。
「大胆な塗装」
どうもジェット旅客機には今ひとつ。

<登場飛行機一覧>
1 「白鳥号」
2 96陸攻
3 B・E・12
4 B・E・2c
5 BAC-111
6 DFS194型
7 F・E・2b
8 F・E・8
9 La15型
10 La5型、7型、9型、11型
11 P-12F
12 PS−1
13 R・E・8
14 R-5型練習機
15 S・A・I207、403
16 S・E・5、5A
17 V2
18 YS-11
19 アームストロング「ウイットワース」F・k・8
20 アームストロング「ホイットレー」
21 アブロ「マンチェスター」
22 アブロ「ランカスター」
23 アルバトロス4発輸送機
24 アルバトロスDⅢ
25 アルバトロスDI、DⅡ
26 アルバトロスDrI
27 アルバトロスDV
28 アルバトロス偵察機
29 イリューシンⅡ-2「シュトルモビク」
30 ウェストランド・ライサンダー直協機
31 カーチスA8「シュライク」(モズ)
32 カーチスJN-4
33 カーチスP-40E
34 キ10
35 キ11
36 キ15「神風」
37 キ17(九五式三型)練習機
38 キ27「九七戦」
39 キ76
40 キ9(九五式一型)練習機
41 グラマンF4F「ワイルドキャット」
42 グラマンF6F「ヘルキャット」
43 月光
44 ゴータ重爆撃機
45 コードロンC710
46 コードロンC714戦闘機
47 コードロンC760
48 コードロンG型
49 コードロンR型
50 コードロン競争機
51 コルセア
52 コンソリデーテッドB-24「リベレーター」
53 コンソリデーテッドPB2Y「コロネード」
54 コンソリデーテッドPBY「カタリナ」哨戒飛行艇
55 サボイア・マルケッティS・M・79
56 サボイア・マルケッティS・M・82
57 サルムソン
58 サルムソンSAL・2-A2
59 サンダーランド
60 ジービー
61 ジーメンス・シュッカートDⅢ、DⅣ
62 ジーメンス・シュッカートRⅧ
63 シュドアビアシオン「カラベル」Ⅰ~Ⅵ
64 ショート飛行艇
65 スカウト
66 ズバ(S・V・A)
67 スパッドS・11
68 スパッドS・16
69 スパッドS・7
70 スパッドSⅧ
71 スピットファイアV型、Ⅸ型
72 セバスキーP-35
73 セバスキーP-43「ランサー」
74 セバスキーP-44「ロケット」
75 ゼロ戦A6M6
76 ソッピース「キャメル」
77 ソッピース「スナイプ」
78 ソッピース「パップ」
79 ダグラス「ドーントレス」SBD1(海軍)、SBD2(海兵隊)・・・SBD5、A−24A、B
80 ダグラスC-41、C-48、C-49、C-50、C-51、C-52
81 ダグラスC-47
82 ダグラスC-53
83 ダグラスDC-1
84 ダグラスDC-10
85 ダグラスDC-2
86 ダグラスDC-3
87 ダグラスDC-6B
88 ダグラスDC-7C
89 ダグラスDC-8
90 ダグラスDC-9
91 ダグラスDST
92 ダグラスTBD-1「デバステータ」
93 チャンス・ボートF4U-1「コルセア」
94 ツェッペリンR型
95 ツポレフTu-20
96 デハビランド「アルバトロス」
97 デハビランド「コメット」4A
98 デハビランド「ドラゴン・エクスプレス」
99 デハビランド「ドラゴン・ラピード」
100 デハビランド「モスキート」
101 デハビランド2
102 デハビランド5
103 デハビランド9型
104 デハビランドD・H・83「フォックスモス」
105 デハビランドD・H・84「ドラゴン」
106 デハビランドD・H・89「ドミニ」
107 デハビランドD・H・90「ドラゴンフライ」
108 ドペルデュサン水上機
109 ドルニエDoX
110 呑龍
111 ニューポール11型~27型
112 ノースアメリカンB-25
113 ノースアメリカンP-51「ムスタング」
114 ノースロップ「ガンマ」計爆撃機
115 ハインケルHe111
116 ハインケルHe118
117 ハインケルHe162
118 ハインケルHe177
119 ハインケルHe51
120 ハンドレページ「ハリファックス」
121 ビッカース
122 ファルツDⅢ
123 ファルツDXⅡ
124 ファルマンF-50、F-60
125 フィアットCR32
126 フィーゼラー「シュトルヒ」偵察機
128 フェアリー「ソードフィッシュ
129 フォッカー3M
130 フォッカーDⅥ
131 フォッカーDⅦ
132 フォッカーDⅧ
133 フォッカーDrⅠ
134 フォッカー三葉
135 フォッケウルフFw190A-3
136 フォッケウルフFw200「コンドル」
137 ブリストル「ボーファイター」
138 ブリストル・ファイター
139 ブリストルF2A、B
140 ブレゲー14型
141 ブレゲー19型A2、14B
142 ブレリオ
143 ベランカW・B・2「ポワン・ダンテロガシオン(疑問符)号」
144 ヘンシェルHs129
145 ボーイング377ストラトクルーザー
146 ボーイング707
147 ボーイング727
148 ボーイング737
149 ボーイング747
150 ボーイングB-17「フライング・フォートレス」
151 ボーイングB-17F、G
152 ボーイングB-29「スーパー・フォートレス」
153 ボーイングB-47
154 ボーイングB-52A、B、C、D、E、F、G、H
155 ボーイングP-26A「ピーシューター」(豆鉄砲)
156 ホーカー「ハリケーン」
157 ポミリオ
158 ポリカルポフ イ-15
159 ポリカルポフ イ-16
160 ポワザン偵察機
161 マーチンサイドG・100
162 ミグ15型
163 ムスタングP-51D
164 メッサーシュミットBf109E、F
165 メッサーシュミットBf110
166 メッサーシュミットMe163
167 メッサーシュミットMe262
168 メッサーシュミットMe323
169 モーリス・ファルマン
170 モスキート
171 モラーヌ・ソルニエ
172 ヤコフレフ1型
173 ヤコフレフ3型
174 ヤコフレフ9U型
175 ユンカースCL-1
176 ユンカースE-1
177 ユンカースG24、G31
178 ユンカースJ-1
179 ユンカースJu52/3m
180 ユンカースJu86
181 ユンカースJu87「シュトウカ」
182 ユンカースJu88
183 ライト式フライヤー
184 ラグ3型
185 リパブリックP-47サンダーボルト
186 ローラントCⅡ「ワールフィッシュ」
187 ロッキード「ハドソン」
188 ロッキード・スーパーコンステレーション
189 ロッキードF-104「スターファイター」
190 ロッキードL-1011「トライスター」
191 ロッキードP-38「ライトニング」
192 一式戦闘機「隼」
193 一式陸上攻撃機
194 九五式戦闘機(キ10)
195 九三式単発軽爆撃機
196 九試艦攻
197 九七式一号艦上攻撃機
198 九七式三号艦上攻撃機
199 九七式戦闘機
200 九七式中爆撃機キ-21
201 九七式二号艦上攻撃機
202 九二艦上攻撃機
203 九二式戦闘機
204 九八式直協偵察機キ-36
205 九六式陸上攻撃機
206 五式戦闘機(キ100)
207 航研機
208 三式戦闘機「飛燕」
209 四式戦闘機「疾風」
210 四式中爆撃機キ-67「飛竜」
211 七試艦攻
212 十三式艦上攻撃機
213 十試艦攻
214 中島九試単戦試作機
215 二式戦闘機「鐘馗」
216 二式大艇
217 八八式軽爆撃機
218 八八式偵察機
219 百式司令部偵察機キ-46
220 百式中爆撃機キ-49
221 六試艦攻



講談社
昭和49年発行
佐貫亦男

翼を愛した男たち




 『ジャッカルの日』で有名なフレデリック・フォーサイスが並べた飛行機乗り物語のアンソロジー。フォーサイスは19才でイギリス空軍に入隊し、1956年から1958年まで勤務している。
 いずれの短編もフォーサイスが選ぶだけの内容をもっている。フォーサイスが冒頭でしている作品紹介を以下に並べた。
出てくる飛行機は不明なものも多い。
でも、ハインケル・・・111だろうか、なんて考えるのもなかなかいい。

●「わたしの初めての飛行機」 H.G.ウェルズ
 若い紳士にとって空飛ぶ機械がれっきとした玩具であった時代を楽しく彷彿させる話。
1 ブレリオ・アラウダ・マグナ

●「ハンス・プファールという人物の無類の冒険」 エドガー.アラン.ポー
 ほらふき男爵やリップ・ヴァン・ウィンクルからさまざまな要素を取り入れたように思われる奇怪な幻想小説。
1 気球

●「高空の恐怖物体」 サー.アーサー.コナン.ドイル
 空を飛び始めた時代の初期の話で、こんにちのわれわれの旅客機とおなじぐらいのたいへんな高さを飛び、高度四万フィートに何が棲息するかをたしかめようとした男を描いている。
1 ポール・ヴェロナー単葉機
2 気球

●「スパッドとシュパンダウ」 W.E.ジョンズ
 新米のアメリカの巣パッド戦闘機部隊が恐るべきリヒトホーフェン・サーカスによって砲火の洗礼を受けるありさまを描いている。
1 SE5
2 アルバトロス
3 ソッピース・キャメル
4 スパッド

●「世界でいちばんすばらしい人々」 H.E.ジョンズ
 ドイツ爆撃の任務を帯びて毎晩夕闇に向けて飛び立ち、夜明け前に(一部)が帰ってくる若者たちの物語
1 デハヴィランド「モス」
2 アブロ「アンソン」
3 ショート「スターリング」
4 スーパマリン「スピットファイヤ」
5 メッサーシュミットMe109

●「彼らは永らえず」 ロアルド.ダール
 空と飛行機を描く物語のなかでも、もっとも風変わりかつ奇怪なもの。
1 ホーカー「ハリケーン」
2 アブロ「ランカスター」
3 ドルニエ(空飛ぶ鉛筆)
4 ハンドレページ「ハリファックス」
5 メッサーシュミット
6 スーパーマリン「スピットファイア」
7 ショート「スターリング」
8 サヴォイア79
9 ユンカースJu-88
10 グロスター「グラディエーター」
11 「ハムデン」
12 マッキ200
13 ブリストル「ブレニム」
14 フォッケ-ウルフ
15 ブリストル「ボーファイター」
16 「ソードフィッシュ」
17 ハインケル

●「羊飼い」 フレデリック.フォーサイス
(フォーサイスは自分の作品には触れていないが、訳者が「いかにもクリスマスにふさわしい話」と書いている)
1 「ヴァンパイア」
2 デハヴィランド「モスキート」
3 スーパーマリン「スピットファイア」
4 ホーカー「ハリケーン」
5 アブロ「ランカスター」
6 ハンドレ・ペイジ「ハリファックス」
7 ショート「スターリング」

●「ヴィンターの朝」 レン.デイトン
 第一次世界大戦が舞台で、幕引きは一見陳腐であり、フランダースで払暁の哨戒に出撃する戦闘機パイロットを描く小品
・・・主人公はシュパンダウ機関銃を武装とするメルテツェデス発動機の飛行機に乗るが機種は不明。主人公の撃墜した飛行機は「ブリストル」

●「ウェーク島へ飛ぶ夢」 J.G.バラード
 ある宇宙飛行士にまつわる物語で、事故らしきことがあって精神に傷を負ったその宇宙飛行士が海辺で健康を回復しようとしている。第二次世界大戦中の爆撃機の残骸を彼は砂の中から掘り起こす。
1 メッサーシュミット109
2 ボーイングB-17「フォートレス」

●「猫」 リチャード.バック
 1950年代のヨーロッパのどこかに配属されたアメリカ空軍のF-84サンダーストリーク戦闘機の飛行隊の世界。
1 F-84「サンダーストリーク」
2 フォッケ-ウルフ
3 メッサーシュミットMe109
4 P-47「サンダーボルト」

●「大空の冒険家たち」 H.G.ウェルズ
 飛行の胚芽期をふりかえる。向こうみずな夢のような計画、突拍子もない発明。常軌を逸した設計、正気の沙汰とは思えない危険なこころみ。

●勇者かく瞑れり」 H.E.ベイツ
 北海上空で撃墜され、波の翻弄される救命筏の上で懸命に生き延びようとするスターリング爆撃機の乗員たちの物語。
1 ショート「スターリング」
2 スーパーマリン「スピットファイア」

●「偵察飛行士」 F.ブリトン.オースティン
 復讐に燃えるドイツの戦闘機に追いすがられる前に味方の前線にひきかえし、伝言鞄を投下しようと苦闘するパイロットを描いている。

●「ミスター・スタンドファストは召される」 ジョン.バカン
 イギリス軍師団がいかに脆弱であるかを知り、喜び勇んでそれを伝えるために帰投する六機のドイツ軍偵察機のほうを見あげている歩兵将校の目を通して、それを描いている。
1 グロスター・グラディエーター(グラーダス)

1997年
原書房
フレデリック・フォーサイス
伏見威蕃・他 訳

夜間戦闘機-戦闘日誌1941-1945


 表紙をめくると航空服を着た2人の青年搭乗員の写真がある(1人は著者)。なかなかかっこいい。そのままロックギターをもたせたいような雰囲気。
 バトル・オブ・ブリテンが終わった1941年から1945年の終戦まで、著者はテストパイロットとしてモスキートの試作機に乗り、レーダーでのドイツ機迎撃戦に参加する。夜間戦闘や搭乗員の日常生活を日記としてまとめたもの。現代ならきっとブログですな。
 興味深いのは「世界の駄っ作機」で有名なウェルキンも登場する。著者は同僚とウェストランド社に出張し、ウェルキンのテストを行っている。メーターの取り付けの配線間違いやら手違いやらですぐに着陸してしまうエピソードが書かれている。評価は悪くない。著者がテストパイロットだったせいか、「タイガー・モス」から「ミーティア」まで予想以上にたくさんの飛行機が登場している。


1 BE2e
2 アームストロング「ホィットレイ」
3 アブロ「アンソン」
4 アブロ「ランカスター」
5 ヴィッカース「ウェリントン」
6 ウェストランド「ウェルキン」
7 グラマンF6F「ヘルキャット
8 グロスター「ミーティア」
9 コンソリデーテッドB-24「リベレーター」
10 ショート「スターリング」
11 スーパーマリン「ウォーラス」
12 スーパーマリン「スピットファイヤ」
13 ダグラスA-20「ハボック」
14 ダグラスDC3「ダコタ」
15 デ・ハビランド「タイガー・モス」
16 デ・ハビランド「ホーネット・モス」
17 デ・ハビランド「モスキート」、「モスキート15」
18 ドルニエDo17
19 ドルニエDo215
20 ドルニエDo217
21 ノースアメリカン「ブラック・ウィドウ」
22 ノースアメリカン「ムスタング」
23 ハインケルHe111
24 ハインケルHe177
25 ハンドレ・ペイジ「ハーロウ」
26 ハンドレ・ペイジ「ハリファックス」
27 フェアリー「デルタ」
28 フェアリー「ファイアフライ」
29 フェアリー「ファルマー」
30 フォッケウルフFw190
31 ブリストル「ブレニム」
32 ブリストル「ボーファイター」
33 ボーイングB-17「フライング・フォートレス」
34 ホーカー「タイフーン」
35 ホーカー「テンペスト」
36 ホーカー「ハリケーン」
37 マーティンB-26「マローダー」
38 メッサーシュミットMe109
39 メッサーシュミットMe110
40 ユンカースJu86P
41 ユンカースJu88

ハヤカワ書房
昭和52年初版
J・H・ウィリアムズ
渡部辰雄、宇田道夫 訳

戦闘機-英独航空決戦




 ねちっこいレン・デイトンが、ねちっこくバトル・オブ・ブリテンを根ほり葉ほり書いた本。ドイツもイギリスも失敗を繰り返しながら戦争を行っていたのだなと思った。ドイツがほとんど勝利していたのに、あと一押しのところで自滅していく。戦争が戦場よりも政治で動いていったのが分かる。
 空軍大将サー・ヒュー・ダウンディングの人物像が面白い。もちろん飛行機についても、ねちっこく構造から歴史から設計者の人物増や背景まで書き込んでいる。いやになるくらいたくさんの種類の飛行機が名前を連ねている。

1 「ブレリオ」
2 AEG-GⅣ
3 アブロ「チューター」
4 アラドAr66
5 アルバトロスDV2
6 ウーデットU4
7 カーチスF8C「ヘルダイバー」
8 グロスター「グラディエーター」
9 スーパーマリン「スピットファイヤー」
10 スーパーマリン「スピットファイヤー」F7/30
11 スーパーマリンS6B
12 ソッピース「キャメル」
13 ダグラスDC-1
14 チャンス・ヴォートV156
15 ドルニエ・ワル飛行艇
16 ドルニエDo17Z
17 ドルニエDo215
18 ドルニエDoX
19 ハイケンルHe45
20 ハイケンルHe51
21 ハインケルHe111P,H
22 ハインケルHe112
23 ハインケルHe70
24 ハンドレ・ページ「ヘイフォード」
25 フェアリー「バトル」
26 フォッケウルフFw200
27 フォッケウルフFw44
28 ブラックバーン「スキュア」
29 ブリストル「ブルドッグ」
30 ブリストル「ブレニム」
31 ブリストル複座戦闘機
32 ヘンシェルHs123
33 ホーカー「ハート」
34 ホーカー「ハリケーン」
35 ホーカー「フューリー」
36 ポールトン・ポール「デファイアント」
37 ポリカルポフI-16
38 メッサーシュミットBf108
39 メッサーシュミットBf109E,F
40 メッサーシュミットBf110
41 メッサーシュミットMe210A-O
42 メッサーシュミットMe262
43 ユンカースF13
44 ユンカースJu52/3m
45 ユンカースJu87B,R
46 ユンカースJu88A
47 ライト「フライヤー」
48 ルフトハンザG24


(おまけのエンジン部)
ロールス・ロイス・マーリン
ダイムラー・ベンツDB601
ゴスホークⅡ

ハヤカワ文庫
レン・デイトン
内藤一郎 訳

夜間戦闘機-ドイツの暗闇のハンティング




 ドイツ軍の夜間戦闘機と連合軍爆撃軍の戦いを戦史的にまとめたもの。夜間戦闘が生まれた背景から終焉までを、史実としての記録と搭乗員のいくつかのエピソードでまとめている。写真や図をふんだんに使っていてカタログ的な面白さもある。

1 アームストロング「ホイットリ」V(ホイットレー)
2 アブロ「マンチェスター」
3 アブロ「ランカスター」
4 アラドAr234B-2「ヘハト」
5 コンソリディテッドB-24「リベレイター」
6 ショート「スターリング」
7 タンクTa154A「モスキート」
8 デハビランド「モスキート」
9 ドルニエDo17Z「カウツⅡ」
10 ドルニエDo215B「カウツ3」
11 ドルニエDo217E、J、N
12 ノースアメリカンP-51「ムスタング」
13 ノースロップP-61「ブラック・ウィドウ」
14 ハインケルHe100D-1
15 ハインケルHe219V、A「ウーフー」
16 ハンドレページ「ハリファックス」
17 ハンドレページ「ハンプデン」
18 ビッカース「ウェリントン」I
19 フォッケウルフFw190A-8
20 ブリストル「ブレニム」IF
21 ボーイングB-17E「フライング・フォートレス」
22 メッサーシュミットBf109C、D、G
23 メッサーシュミットBf110C、D、E、F、G
24 メッサーシュミットBf210
25 メッサーシュミットMe262A、B
26 ユンカースJu188
27 ユンカースJu88A、C、G、R
28 リパブリックP-47「サンダーボルト」
29 ロッキードP-38「ライトニング」


光人社文庫
渡辺洋二
2002年初版

フォッケ=ウルフ迎撃隊





 1944年秋のポーランド、連合軍の爆撃機が連日襲来する中での迎撃戦に挑むドイツ空軍の若者たちの日々。著者は実際にFW190のパイロットだったということで、実際のFW190のデティールや航空団の日常を細かく描いている。ドイツの戦争文学としても「Uボート」に匹敵すると訳者あとがきに書かれていたが、確かに読ませる。そして、重い内容だ。
 皮相的な表現や自省的な表現が全体的なトーンとして強く感じる。この時代の青年の生と死への構えだったのかもしれない。本を読み進めるに従ってこの思いは強くなる。独特な淡々とした記述がおどろおどろした日常をかえって浮かび上がらせる。「焼夷弾二発、炸裂弾、鉄鋼弾各一発、焼けただれた胸郭が二つ、くだけた太腿に割れた頭蓋骨・・・」フォッケウルフに装備する弾帯を装弾している時の表現。
 主人公はまだ学生くささを残した若いパイロットでエースでもなければ、ヒーローでもない。敵機との空戦では弾丸は一発も当たらず、逃げ回る日々。いや、当てないでいることが後に分かる。落ちていく飛行機を見ると敵味方関係なく、パラシュートが開くかどうかを気にかけ、燃えあがるコクピットを見ては焼け焦げる肉のにおいと断末魔の苦しみを想像する。華々しく見える空戦も、コクピットの中ではパイロットが汗と血と尿と糞と吐瀉物にまみれて、わめき泣き叫び声をあげている。墜落したり炎上したりした飛行機の残骸の中を主人公はいつものぞきにいき、パイロットだった人間の肉や骨を見つめる。そしてまた親友とのジャズ演奏や恋人との密会の日常に帰っていく。そんなナイーブな青年が、戦争神経症になるわけでもなく、一日に何度もくり返される出撃の日々を淡々と過ごしていく。
強い無常観を感じさせる。
 ドイツのエースが100機以上、時には300機にものぼることに疑問をもっていたが、謎がとけた。ベテランか新米かで空戦は生死の分かれ目が全く違う。生き延びたものは次の日も生き延びる確立は高い。そして日に何度も出撃がくり返される。死ぬまでくり返される。かくして生き延びたものは撃墜数が伸び、死ぬ確立は下がっていく。新米ですぐに撃ち落とされるか、生き延びてエースになるか。その中間はない。この本の主人公は、敵を落とさず生き延びていこうとする・・・。
 ともかく、えらいたくさんの飛行機の名前が登場する。これくらい細かく技術的な描写や様々飛行機のことを書いてしまうと普通の文学好きには敬遠されるだろうなと危惧してしまう。なかなか読み応えのある本だった。



1 P-51ムスタングA、D「ムスタング」
2 アブロ「マンチェスター」
3 アブロ「ランカスター」
4 アラド96
5 アントノフA-7
6 カーチス「キティホーク」
7 カーチス「トマホーク」
8 コンソリディテッドB-24「リベレイター」
9 シュツルモヴィク(おそらくイリユーシン Il-2)
10 ショート「スターリング」
11 スーパーマリン「スピットファイア」
12 ダグラスDC-3
13 デ・ハビランド「モスキート」
14 ドルニエDo214
15 ドルニエDo217
16 ドルニエDo335
17 ノースアメリカンB-25「ミッチェル」
18 ノースロップP-61「ブラック・ウィドー」
19 ハインケル「プリッツ」
20 ハインケルHe111
21 ハインケルHe116
22 ハインケルHe177
23 ハインケルHe219
24 ハインケルHe51
25 ハインケルHe66
26 ハンドレページ「ハリファックス」
27 ビュッカー131
28 ビュッカー181
29 フィーゼラーFi156「シュトルヒ」
30 フォッケウルフ「ヴァイエ」
31 フォッケウルフ「シュティークリッツ」
32 フォッケウルフFW190-A8、D9
33 フォッケウルフFw200「コンドル」
34 フォッケウルフTa152
35 フォッケウルフTa400
36 ブリストル「ボーファイター」
37 ベルP-39「エアラコブラ」
38 ボーイングB-17A、B、E、F、G
39 ホーカー「タイフーン」
40 ホーカー「テンペスト」
41 マーチンB-130
42 マーチンB-26「マローダー」
43 ミコヤン・グレビッチMiG-3
44 メッサーシュミットMe108「タイフーン」
45 メッサーシュミットMe109
46 メッサーシュミットMe110
47 メッサーシュミットMe210
48 メッサーシュミットMe262
49 メッサーシュミットMe410
50 ヤコブレフYak-7
51 ユンカースJu160
52 ユンカースJu290
53 ユンカースJu390
54 ユンカースJu52
55 ユンカースJu88
56 ユンカースJu88R1「ドーラ5」
57 ユンカースJu90
58 ラボーチキンLaGG-5
59 リパブリックP-47「サンダーボルト」
60 ロッキードP-38「ライトニング」

(ついでにエンジン編)
DB601、DB603、DB605、DB606
BMW801D
Jumo211、Jumo222、004
アルグスAs10C


早川書房
昭和59年初版
ルードルフ・ブラウンブルク
松谷 健二 訳

爆撃機



 600ページの大作。早く読むことには自信があるが、この本には一月かかった。何しろ登場人物が多い上に、一人一人への書き込みが細かい。たくさんのシーンが描かれ、そこに登場する人間一人一人について丁寧にというよりも、しつこいほど書き込んでいる。
 さら風景描写が細かい。遠景だけでなくズームアップして書き込むような場面もある。遠い空の様子から機体のねじの頭まで映画のカメラが追っかけるような描写。
 しかも、600ページかけてランカスターがドイツへ爆撃に行く1日を、攻撃するイギリス側と爆撃されるドイツ側の双方から書き進めている。 重厚。読み応えがある。

1 アブロ「ランカスター」
2 ショート「スターリング」
3 スーパーマリン「スピットファイヤー」MkⅩⅠ
4 デ・ハビランド「モスキート」
5 ドルニエDo217
6 ハインケルHe219
7 ハインケルHe51
8 ハンドレページ「ハリファックス」
9 ビッカース「ウエリントン」
10 ブリストル「ボーファイター」
11 ブリストル「ブレインハイム」(ブレニム:Blenheim)
12 ブリュースター「バッファロー」110
13 ベルP-39「エアラコブラ」
14 ホーカー「ハーツ」
15 ホーカー「ハリケーン」
16 ポールトンポール「デファイアント」
17 メッサーシュミットBf110
18 ユンカースJu88R
19 ラボーチキン「La5FN」
20 ラボーチキン「LaG3」


早川書房
1979年初版
レン・デイトン
後藤安彦 訳